エアコンの冷媒ガス(フロン)漏れの危険性とガスセンサ
エアコンなどに使用される冷媒ガスにはさまざまな種類がありますが、環境負荷の少ない自然冷媒には強い燃焼性があるものもあり、万が一これらのガス漏れが発生すると、火災や爆発などの重大事故につながる可能性があります。
そこで、リスクの低減のために、一定以上の充填量の微燃性(A2L)冷媒を使用する空調機器等にはガスセンサによる漏洩検知が求められています。
エアコンに使用される冷媒ガス(フロン)とは
エアコンなどの空調機器が室内の温度を上げたり下げたり、冷蔵庫などの冷凍冷蔵機器が庫内を冷却したりする仕組みにおいて欠かせないのが、空気中の熱を運ぶ役割を持つ「冷媒」です。
室内機と室外機を繋ぐ2本の配管の中を冷媒ガスが循環することで、冷房時には部屋の熱を外に、暖房時には外の熱を部屋に移動させます。
冷房のしくみ
- 室内機が部屋の暖かい空気を吸いこみ、冷媒に乗せます。
- 暖かい空気を乗せた冷媒ガスが室外機に送られて、圧縮機で高温・高圧になります。
- 高温になった冷媒ガスは、室外機のファンによって外へ排気されます。
- 熱が放出された冷媒ガスを、低温に冷やします。
- 低温に冷えた冷媒ガスを室内機に戻し、室内に冷たい風を吹き出します。
冷却のしくみ
冷媒ガスとして使われているフロンは常温では気体ですが、圧縮機で圧力をかけると液体になり、減圧機で圧力を下げるとまた気体に戻るという性質を持っています。液状の冷媒ガスが気体に変わる時に発生する気化熱によって、空気が冷却されます。
冷媒ガス(フロン)の毒性と可燃性
主な冷媒ガスの種類と地球環境への影響
種類 | 冷媒番号 | オゾン層破壊係数(ODP) | 地球温暖化係数(GWP) | 毒性燃焼 クラス |
|
---|---|---|---|---|---|
特定フロン | CFC | R-12 | 1 | 10900 | A1 |
HCFC | R-22 | 0.055 | 1810 | A1 | |
代替フロン | HFC | R-407C | 0 | 1770 | A1 |
R-410A | 0 | 2090 | A1 | ||
R-32(新冷媒) | 0 | 675 | A2L | ||
R-454B | 0 | 486 | A2L | ||
HFO | R-1234yf | 0 | 1 | A2L | |
ノンフロン | 自然冷媒 | R-290(プロパン) | 0 | 10 | A3 |
R-717(アンモニア) | 0 | <1 | B1 | ||
R-744(CO2) | 0 | 1 | A1 |
代表的な冷媒ガス「フロン」は一般的にフルオロカーボン(炭素とフッ素の化合物)のことで、冷蔵庫やエアコンの冷媒として開発されました。
フロンは、その種類によって毒性や燃焼性が異なります。冷媒の安全性を規定する国際規格では、毒性を2つの区分(毒性なし:A、毒性あり:B)、燃性を4つの区分(不燃性:Class1、微燃性:Class2L、可燃性:Class2、強燃性:Class3)に分類しています。
冷媒ガス(フロン)の地球環境への影響
フロンには化学構造や組成の違いから多くの種類がありますが、かつてエアコンの冷媒に使用されていた特定フロンのCFC(クロロフルオロカーボン)はオゾン層破壊の問題があるため、先進国では1996年、日本においては2005年に生産・消費ともに禁止となりました。
比較的影響が小さいとされるHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)も地球温暖化を引き起こす温室効果ガスであることから、フロンガスの種類を特定し世界的な規制を定める「モントリオール議定書」という国際条約によって2020年に実質全廃されました。
その後、代替フロンとしてGWP(地球温暖化係数)の小さいHFC(ハイドロフルオロカーボン)やHFO(ハイドロフルオロオレフィン)などの微燃性冷媒ガス(A2L)への切り替えが進められました。しかし、これらの冷媒はオゾン層を破壊しない代わりに地球温暖化をもたらす温室効果ガスであることが明らかになっています。
そこで、近年ではGWPがさらに小さく、従来の化学的に合成されたフロンガスとは異なりオゾン層破壊の恐れや地球温暖化の影響が少ない「自然冷媒」の導入が進んでいます。
自然冷媒は、アンモニア(NH3)、二酸化炭素(CO2)、水(H2O)、空気、炭化水素(HC)など、自然界にもともと存在する物質によって作られるため環境への負荷が格段に少ないという特長があります。
冷媒ガスを検知するガスセンサの役割
現在、空調機器に広く普及しているHFC(R-32)と呼ばれる冷媒ガスは、GWPは小さいですが微燃性(A2L)という性質をもつことから、万が一ガスが漏れた場合に発火する可能性があります。
また、地球温暖化の影響が少ないことから導入が進んでいる自然冷媒のなかには強燃性(A3)のものもあるため、発火による事故リスクの低減のためにガスセンサによる漏洩検知が求められています。
エアコンの設置場所と求められる仕様
壁掛け、ビル用マルチエアコン... 小型、低消費電力
セントラルヒーティングエアコン(米国一般家庭) ...耐高温、防水、UV耐性
ヒートポンプ式温水暖房機 ...屋外対応、防塵、防水
ガスセンサに求められる仕様は組み付けられる空調機により異なるため、耐高温性や防水性・防塵性・UV耐性など各々の状況に対応するためのラインナップが必要です。
FIGAROの冷媒ガス検知用ガスセンサモジュール
冷媒ガスを高感度に検知するフィガロのガスセンサは、冷媒ガスの漏れをいち早く検知することで事故のリスク低減に貢献します。
冷媒ガス検知用ガスセンサモジュール FCMシリーズ
FCM2630シリーズは、各種冷媒ガスを高感度に検知できるガスセンサを搭載した、微燃性冷媒(R-32)で警報点調整済のモジュールです。小型で低コスト・長寿命という特長から家庭用エアコンや商業施設用エアコンの微燃性冷媒ガスの漏れ検知用として最適です。
用途
空調機器用冷媒ガス漏えい検知
特長
- 10年以上の長寿命
- 微燃性冷媒R-32検知用に最適化された警報濃度設定
- 温度補償回路
- 干渉ガスの影響を受けにくいフィルターを内蔵
- コンパクトで高精度
- IP5Xの防塵性・IPX5の防水性能
ラインナップ
FCM2630-H
検知対象ガス:R32(A2L)
期待寿命:約15年
FCM2630-K
検知対象ガス:R454B(A2L)
期待寿命:約15年
※ 防水タイプ
※ IP55規格に準拠
FCM2610-G
検知対象ガス:R290(A3)
期待寿命:約15年
※ 防水タイプ
※ IP55規格に準拠
FCM2610-H
検知対象ガス:R290(A3)
期待寿命:約15年
※ 開発中
Gas Sensing Innovation
フィガロ技研は世界トップレベルの生産販売量を誇るガスセンサメーカーです。
1969年の創業以来「独自のガスセンシング技術を通じて、世界の人々の安全・安心・快適な生活を実現する」を合言葉に、半導体式ガスセンサをはじめとした各種ガスセンサの研究開発、応用商品の開発・普及に取り組んでいます。