【研究紹介】電子回路基板から発生するガスの検知と火災予兆検知

目次

近年、IoT(Internet of Things:モノに通信機能を搭載することでインターネットに接続・連携させる技術)の普及により、電子機器の高機能化と小型化が進んでいます。

それに伴い、電子機器内部の主要部品である電子回路基板には、複雑な電子部品の実装を最小限のスペースで実現するためにさらなる高密度化が求められるようになりました。

電子回路基板の高密度化と火災のリスク

高密度の電子回路基板では、長期の使用や熱の蓄積等によって品質劣化のリスクが高くなります。

電子回路基板や電子部品の樹脂あるいは配線被覆等の劣化によって、短絡が発生することで最悪の場合は火災に至る場合があります。

このような事故を回避するために、一般的にはヒューズ(電気回路に過電流が流れた際に、回路を切断して電子回路の破損を防ぐ安全装置)等の各種保護素子が用いられますが、データーサーバーや自動車といった高度の安全性が求められる用途では、さらなる安全策が必要とされています。

電子回路基板の発熱によるガスの発生とガスセンサ

フィガロ技研の半導体式ガスセンサは、過電流の印加などに起因する回路基板の発熱によって発生する臭気成分を早期に検知することで、基板が発煙・発火する前の初期段階で異常を検出できる可能性があります。

本記事でご紹介する研究では、電子回路基板の発熱によって発生する臭気成分を、フィガロ技研の半導体式ガスセンサで検知できることを確認できました。

対象製品

TGS2600

【空気の汚れ検知用ガスセンサ】

検知対象ガス:空気の汚れ(水素、アルコールなど)

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TGS2602

【空気の汚れ・ニオイ検知用ガスセンサ】

検知対象ガス:空気の汚れ(VOC、アンモニア、硫化水素など)

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TGS2603

【空気の汚れ・悪臭検知用ガスセンサ】

検知対象ガス:空気の汚れ(トリメチルアミン、メチルメルカプタンなど)

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【研究内容】検出ガスごとのFIGAROガスセンサによる感度特性

回路基板から発生する揮発性ガスの分析

5種類の回路基板を250℃に加熱したときに発生した揮発性ガスについて、ガスクロマトグラフィー及び質量分析を実施した結果、各基板からはそれぞれ種類の異なるガス種が検出されました。

検出されたガスは、以下の5種類に大別されます。

検出ガス

(参考文献)堀川敦 , 丸本佳伸 , エレクトロニクス実装学会 , 34 , 3B2-01 (2020).

センサの選定と作動電圧最適化検討

検出された5種類のガスに対する各センサの感度特性と、最適な作動電圧(ヒーター印加電圧)を見出すための調査を行いました。なお、各指標ガスの濃度は10ppmとしました。

各センサの感度特性は以下のようになりました。

 各作動電圧における指標ガス10ppmに対する応答(軸:センサ抵抗比の逆数)

(TGS2600)
いずれの作動電圧も各ガス種に対する感度が比較的小さいが、感度のバランスは取れている

(TGS2602)
比較的TGS2603と近い感度パターンを示したが、作動電圧を高くする事で芳香族ガスへの感度が大きくなり、全てのガス種に対する感度のバランスが良い

(TGS2603)
芳香族ガスには感度がほとんどないが、高い作動電圧ではアルコールガス、ケトンガスへの感度が大きい

火災予兆検知に利用するガスセンサに求められる特性は、特異的な高感度性よりも様々なガスに対する感度の均一性があるという点において、作動電圧5Vで駆動させたTGS2602は最も良好な特性であると考えられます。

揮発性ガスの発生挙動とセンサ応答の確認

密閉容器内にて電子回路基板上の配線パターン(ライン幅1mm、ライン長50mm、銅厚35μm)に12Aの過電流を印加した際の、TGS2602のセンサ抵抗の変化と配線パターンの状態変化を観察しました。

過電流印加により発生した基板揮発ガスに対するTGS2602のセンサ抵抗変化と配線パターンの状態変化

過電流の印加直後からセンサ抵抗値の低下が確認され、配線パターンから何かしらのガスが発生している事が確認されました。

さらに7分経過した際には、強いにおいが発生していた事を確認しました。また、配線パターンの中央は黒く変色していました。

【研究結果】回路基板の異常発熱を検出するガスセンサ

今回の研究では、密閉空間あるいは臭気発生源付近にガスセンサを設置することで、 発煙や発火が発生するよりもかなり初期の段階で回路基板の異常発熱を検出できる可能性が示唆されました。 

また、回路基板上に、ガスセンサとその信号によって作動する電源遮断回路を実装することで、システム障害を未然に防いだり事故被害を最小限に抑えるといった活用が期待されます。

(参考文献)
・金沢学 , 電気設備学会誌 , 37, 866-869 (2017)
・北口久雄 , JETI, 50, 51-54 (2002)
・堀川敦 , 丸本佳伸 , エレクトロニクス実装学会 , 34, 3B2-01 (2020)

早期のガス検知で火災への安全対策に貢献するFIGAROガスセンサ

多種類のガスに高感度なFIGAROガスセンサは、現在普及している広域(室内)監視型の発火検知システム(例:サーモカメラなど)よりも格段に早いタイミングでガスを検知し、万が一の火災時にも初期段階で素早く知らせます。

高感度なTGS26シリーズガスセンサ

FIGARO26シリーズガスセンサは、相対値検知 (空気がきれいなときの抵抗値を基準として、そこからどれだけセンサの抵抗値が変化したかによって空気の汚れを検出する方法)によって、より人間の感覚に近い制御を実現します。

長寿命で低コストながら、簡単な電気回路で使用可能。さらに、RoHS2(電子機器や電気機器に含まれる特定の有害物質の使用を制限する欧州指令)に適合する3タイプをご紹介します。

TGS2600

TGS2600

【用途】

  • 空気質制御
  • 家電用

【特徴】

  • 低消費電力
  • タバコの煙、調理臭に高感度

TGS2602

TGS2602

【用途】

  • 空気質制御
  • 家電用

【特徴】

  • タバコの煙、調理臭に高感度
  • VOC、アンモニア、硫化水素に高感度

TGS2603

TGS2603

【用途】

  • 空気質制御
  • 家電、自動車用

【特徴】

  • アミン系、硫黄系等の悪臭物質に高感度
  • 食品臭に高感度

【応用例】

  • 空気清浄器コントロール

  • 換気扇コントロール

  • 室内エアモニター

             など

【応用例】

  • 空気清浄器コントロール
  • 換気扇コントロール
  • 脱臭機コントロール
  • 室内エアモニター

            など

【応用例】

  • 換気扇コントロール

  • 脱臭機コントロール

  • 車室内エアモニター

            など

フィガロ技研は、豊富な製品ラインナップと高い品質の製品でお客様のニーズにお応えいたします。安全、安心、快適な生活の実現に、高感度で信頼性が高いガスセンサをお役立てください。

World Leader in
Gas Sensing Innovation

フィガロ技研は世界トップレベルの生産販売量を誇るガスセンサメーカーです。
1969年の創業以来「独自のガスセンシング技術を通じて、世界の人々の安全・安心・快適な生活を実現する」を合言葉に、半導体式ガスセンサをはじめとした各種ガスセンサの研究開発、応用商品の開発・普及に取り組んでいます。