2026.05.20

リチウムイオン電池とは?基本構造と仕組みを解説!

目次

リチウムイオン電池とは、電極にリチウムという金属を含んだ化合物を使い、リチウムイオンの移動を利用して充電と放電を行う二次電池の一種です。小型・軽量かつ長寿命という特長から、スマートフォンやパソコンなどの身近な家電製品や電気自動車や家庭用・産業用蓄電池など幅広い分野で利用されています。

そんなリチウムイオン電池を安全に使用するためには、その原理や使用方法などをしっかりと理解しておく必要があります。今回は、リチウムイオン電池の特徴や電気を作る仕組みについて解説していきます。

リチウムイオン電池とは

まずは、電池の種類について簡単に説明します。電池はその仕組みや用途によっていくつかのカテゴリーに分類され、化学反応から電気を作る化学電池と、熱や光などの物理的なエネルギーを電気に変換する物理電池の2つに大別されます。また、それぞれの中でさらに細かく分類されます。

化学電池は、使い切りの一次電池、充電して繰り返し使用できる二次電池、化学反応により発生した電気を継続的に取り出す燃料電池の3つに分別されます。リチウムイオン電池は、化学電池の中の二次電池に属します。

物理電池は、太陽光を直接電気エネルギーに変換する太陽電池、高温環境下で熱エネルギーを利用して発電する熱電池、放射性物質の崩壊によって発生するエネルギーを利用して電力を生み出す原子力電池の3つに分別されます。

電池の分類

リチウムイオン電池は、電極にリチウムという金属を含んだ化合物を使い、リチウムイオンが正極と負極の間を移動することで充電や放電を行います。リチウムは非常に軽くて小さい物質のため、原子を多く含んでいても小さくて軽い電池が製造できます。

そして、小型かつ耐久性に優れるという特長から、スマートフォンやノートパソコンなどの家電製品に使用されています。また、大容量の電力を蓄えられるため、電気自動車やインフラなどにも広く使用されています。

リチウムイオン電池のメリット

リチウムイオン電池が主流になる前は、鉛蓄電池が幅広い用途で活用されていました。それではなぜ、リチウムイオン電池が注目されるようになったのでしょうか。それは、今まで主流として使用してきた鉛蓄電池に勝るさまざまなメリットがあるためです。

  • エネルギー密度が高いため、小さくて軽い大容量の電池を製造できる

  • 繰り返し充電が可能で、急速充電性能が高い

  • 充電のたびに容量が減る「メモリー効果」が少なくバッテリーが長寿命

  • 環境に負荷が掛からない素材を使用している

このように、リチウムイオン電池の性能は軽量化・コンパクト化が進む電気・電子製品のニーズに適しているのです。

鉛蓄電池は安価ですが、重量・サイズが大きい、充電時間が長い、寿命が短いといった欠点があります。また、鉛と硫酸を含むため、環境負荷やリサイクルの問題も懸念されています。これらの課題を解決するリチウムイオン電池の市場は、今後さらに成長すると考えられています。

リチウムイオン電池の開発の歴史

現在のモバイル機器や電気自動車(EV)に不可欠なリチウムイオン電池の開発は、1950年代から始まりました。

1950年代  1958年

アメリカで実用化に向けた研究開発が始まる

1970年代   一次電池としてリチウムイオン電池が実用化
1980年代 1980年

ジョン・グッドイナフ博士がコバルト酸リチウムを正極に採用することを提案

  1981年

吉野彰博士がプラスチックポリアセチレンを負極に採用し、リチウムイオン二次電池の 基礎を確立

1990年代

1991年 ソニー・エナジー・テックが世界で初めてリチウムイオン電池を商品化
2010年代   リチウムイオン電池の開発に貢献した研究者たちがノーベル化学賞を受賞

これらの進展により、リチウムイオン電池は人類にとって非常に大きな利益をもたらすこととなりました。ノーベル賞を受賞した研究者たちの業績は、現在の技術社会における基盤となっています。

リチウムイオン電池の仕組み 

リチウムイオン電池の原理
(参考)NEDO国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構

リチウムイオン電池は主に①正極②負極 ③正極と負極を分けるセパレーター ④その間をうめる電解液で構成されています。正極と負極はそれぞれリチウムイオンを蓄えられるようになっており、このリチウムイオンが電解液の中を通って正極と負極の間を移動することで、エネルギーを貯めたり使ったりすることができます。

リチウムイオン電池の特徴

リチウムイオン電池は、充電可能であり、軽量でエネルギー密度が高く長寿命ですが、コストが高く、安全性に関しては取扱いに注意が必要な場合があります。

 

一次電池

二次電池

 

アルカリ乾電池(単三型)

鉛蓄電池

リチウムイオン電池

ニッケル水素電池

NAS電池

充電機能

 ー  〇   〇   〇   〇
 サイズ・重量   〇  △  ◎   〇
 公称電圧(V) △ 1.5   〇2.1  ◎3.7 △1.2   〇2.0
 重量エネルギー密度 (Wh/kg)  〇 100~150 △35  ◎200 △60   〇120
 安全性  ◎   〇   〇

コスト

(円/kwh)

 ◎2.5万円  ◎5万円 △20万円  〇10万円

 ◎4万円

寿命

(サイクル)

△未使用状態で約5~10年  〇17年
3,150回
 〇6~10年 3500回 △5~7年
2,000回

 ◎15年
4,500回

◎優れている 〇標準 △やや劣っている ー機能なし

参照:一般社団法人 電池工業会「電池の仕様と性能」

参照:内閣官房「参考資料1:安心・安全な社会の実現に向けた技術的課題の整理について」

リチウムイオン電池を安全に使用しましょう

リチウムイオン電池には多くの利点がありますが、その一方で、過充電やや落下等の物理的な損傷による発火のリスクもあるため、適切な取り扱いが求められます。

フィガロ技研では、リチウムイオン電池の劣化や外部からのストレスに起因して発生する内部ガスを検知するガスセンサと、それらを活用した安全対策に関する情報を発信しています。

詳しくは、Figaro Journal「リチウムイオン電池の危険性を早期検知!ガスセンサで安全対策」をご覧ください。

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フィガロ技研は世界トップレベルの生産販売量を誇るガスセンサメーカーです。
1969年の創業以来「独自のガスセンシング技術を通じて、世界の人々の安全・安心・快適な生活を実現する」を合言葉に、半導体式ガスセンサをはじめとした各種ガスセンサの研究開発、応用商品の開発・普及に取り組んでいます。