2025.07.03

ガスセンサの使い方(アナログ出力編③)
~ガスセンサと評価用モジュールによるガス中でのデータ取得〜

目次

ガスセンサの使い方 (アナログ編①)ガスセンサの使い方  (アナログ編②)では、フィガロの半導体式ガスセンサと評価用モジュール(EM26)を使用して、一般的なオフィス内でのガスセンサ出力をロギング(収録)する方法について解説しました。

今回は、フィガロの3種類の半導体式ガスセンサと評価用モジュールを使用して、評価用チャンバーにガスを注入し、ガス中でのガスセンサのアナログ出力を取得する方法を解説していきます。

ガス中でのデータ取得方法

必要備品について

これから、ガス中でのデータを取得して評価する方法について説明します。今回は、以下のような設備を用いて評価していきます。

  • ガスセンサ
    (TGS2600など)

  • 評価用モジュール(EM26)

  • デジタルマルチメータまたはデータロガー

  • 評価用チャンバー(EC01)

  • シリンジ
  • ガス(メタン、水素、LPガス、など)

評価用チャンバー(EC01)の役割

評価用チャンバー(EC01)は、ガスセンサの性能評価や特性確認を行うために製作された、小型で取り扱いやすい評価装置です。ガスセンサは気体の種類や濃度によっても、異なる応答特性を示します。

そのため、センサの特性を確認するためには、一定条件下での安定した評価環境が求められます。EC01は、こうしたセンサ評価を簡易的に実現できるツールとして広く活用されています。

このチャンバーを使用することで、特定のガス濃度雰囲気を簡易的に作り出し、センサの応答やガス感度を測定することが可能です。また、複数のセンサを同条件下で比較評価できるため、新製品の開発やセンサの選定、品質管理の現場でも重要な役割を果たします。

評価用チャンバー(EC01)の各部名称について

10. ガス注入口の拡大写真

  1. 試験槽本体
  2. 制御ボックス
  3. AC電源
  4. 電源スイッチ
  5. 撹拌ファン用スイッチ
  6. 撹拌ファン
  7. 電源供給用ケーブル
  8. センサ出力用フラットケーブル
  9. 試験槽蓋(写真は吸排気口付き蓋)
  10. ガス注入口

ガスセンサの装着と配線について

今回は、以下に紹介する、フィガロ技研の3種類の半導体式ガスセンサを使用します。

  • TGS2600(空気の汚れ検知用ガスセンサ)

  • TGS2602(空気の汚れ・ニオイ検知用ガスセンサ)

  • TGS2603(空気の汚れ・悪臭検知用ガスセンサ)

それでは、ガスセンサの装着と配線の手順について簡単に説明します。

(1)ガスセンサを評価用モジュール(EM26)に装着してください。

(2)1でガスセンサを装着した評価用モジュール(EM26)を、評価用チャンバー(EC01)に付属のモジュール測定用ボードに取り付けてください。

(3)評価用チャンバー(EC01)の外に出ているフラットケーブル(50芯)とデータロガーを配線します。

以上で配線は完了です。ガスセンサの装着と配線についての詳細は、ガスセンサの使い方(アナログ編②)~評価用チャンバーを使用したデータ取得~を参考にしてください。

データの取得について

ガス中でのデータ取得を行うため、評価用チャンバー(EC01)に付属の 「5mlシリンジ」 とガスを準備します。また、ガスを適切に排気できるように、局所排気設備やドラフト内に評価用チャンバーを設置します。

気体の試験ガス用シリンジ

H₂(今回は気体の試験ガスである水素を使用)

それでは、データ取得の手順について簡単に説明します。

 (1) 評価用チャンバー(EC01)本体のACケーブルをコンセントに挿します。

 (2) 次に本体のPowerスイッチをONにします。

 (3) データロガーの電源をONにして、サンプリング条件を設定します。

 (4) チャンバーの上蓋を閉めます。

 (5) データロガーでロギング(収録)を開始します。

 (6) ガスセンサのアナログ出力がデータロガー内に収録されます。

ガスバックからガスを採取する

2ml採取したシリンジ

(7) 試験ガスを準備します。ガスは出来るだけ正確な濃度で注入したいため、ガス採取前にシリンジ内部のパージ(※1)を行っておきます。

※1 パージとは、事前に試験ガスを2-3回採取することで、シリンジ内の僅かな空気を排出し、シリンジ内を試験ガスに置換する前準備です。

(8)試験ガスの採取
予め計算で求めた濃度になるように、試験ガスをシリンジに採取します(※2)。ガスには水素(H₂)のような気体の場合とエタノールのような液体の場合があります。
※2 ガス採取量の計算(詳細)は、EC01の取扱説明書を参照ください。

(9)上フタのガス注入用ゴムにシリングを差してガスを注入します(画像左)。その後すぐに、チャンバー内蔵の攪拌ファンをONにします(画像右)。撹拌ファンを回すことでより早く濃度を均一にできます。

「シリンジ挿入用ゴム」飛出し防止用のメンディングテープの上から、ガスを注入する。

(10)必要なデータが取得できたら、チャンバー内のガスを排気します。ガスの排気はドラフト内や局所排気装置をONにするなどして、安全に屋外等へ排出してください。

 (11) ロギングを終了すると、データが保存されます

※データロガーの使い方についてはガスセンサの使い方 (アナログ編①)ガスセンサの使い方 (アナログ編②)を参照してください。

アナログ出力データのグラフ化

取得できたCSVデータをMicrosoftエクセルでグラフ化したものが下図です。半導体式ガスセンサ(3種類)の水素ガス中での応答がよく確認できます。

ごく僅かなガス漏れや周囲環境のガス濃度をモニターされたい場合は、新コスモス電機製:XP-3000IIシリーズや、定置型:PS-8シリーズがお勧めですので、ご参考ください。

複合型ガス検知器XP-3368II-W

コスモス式ガス検知部 PS-8シリーズ

ガスセンサを活用しよう

ガスセンサのアナログデータを取得する方法にはいくつかの手段があり、センサの種類や使用目的(評価・IoT化・制御など)によって適した方法が異なります。

フィガロ技研の公式サイトでは、ガスセンサの検知原理や使用方法などをアニメーションで分かりやすく解説していますので、ぜひご活用ください。

動画でわかる!ガスセンサ

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Gas Sensing Innovation

フィガロ技研は世界トップレベルの生産販売量を誇るガスセンサメーカーです。
1969年の創業以来「独自のガスセンシング技術を通じて、世界の人々の安全・安心・快適な生活を実現する」を合言葉に、半導体式ガスセンサをはじめとした各種ガスセンサの研究開発、応用商品の開発・普及に取り組んでいます。