ガスのこと、ちょっと知ってみよう①メタン編
世の中にはさまざまなガスが存在し、それぞれ物理的性質や化学的特性に基づいて分類されます。
本シリーズでは、ガスセンサの検知対象となる各種ガスについて、代表的な4つの性質に分けて整理し、それぞれの基礎知識を解説していきます。
第1回は、可燃ガスの代表格であるメタンについて解説し、後半では対応するガスセンサについて紹介します。
フィガロ技研では、こうした多様なガスを検知するセンサの開発・製造・販売を手がけています。
可燃性ガスとは〜ガスの性質と分類〜
| 性質 | 特徴 | 主なガス |
|---|---|---|
| 可燃性ガス | 燃焼するガス | 水素、メタン、プロパン 等 |
| 支燃性ガス | 自らは燃焼しないが、燃焼を支えるガス | 酸素、空気、塩素 等 |
| 不活性ガス | 燃焼することもなく、燃焼も支えないガス | 二酸化炭素、窒素、アルゴン 等 |
| 毒性ガス | 人体に機能障害(中毒)を起こさせるガス | 一酸化炭素、硫化水素、アンモニア 等 |
ガスを代表的な4つの性質で分類すると、メタンは可燃性ガスの代表例として広く知られています。
可燃性ガスとは、空気や酸素と混合した状態で着火源が存在すると燃焼する性質を持つガスのことを指します。さらに、空気中で一定の濃度範囲に入ると爆発性混合気を形成するため、安全管理やガス検知が重要となります。
ただし、ガスの中には複数の性質を併せ持つものも少なくありません。
例えば、一酸化炭素やアンモニアは毒性ガスとして扱われることが多い一方で、可燃性も有しています。
このように、ガスの特性は単一の分類だけでは捉えきれない側面を持っています。
メタンとは
メタン(化学式:CH₄)は、アルカン( CnH2n+2で表される飽和炭化水素)の中で最も単純な構造を持つ有機化合物です。
炭素原子1つに対して水素原子4つが結合した正四面体構造をとり、化学的に比較的安定なガスとして自然界に広く存在しています。
メタンの特徴

| 特徴 | 内容 | 説明 |
|---|---|---|
| 分子式 | CH₄ | 構成する元素の種類と数を示しており、メタンはC(炭素)1個とH(水素)4個で構成されます |
| 分子量 |
16 ※空気(約29)より軽い |
分子を構成する原子の原子量の総和です。炭素原子1個を12と定め、それを基準に各原子の重さを決めています。メタンの場合C=12、H=1のため16となります |
| 状態 | 常温常圧で気体(無色無臭) | 人間が地球上で生活している一般的な環境での状態であり、概ね25°C・1気圧での状態となります |
| 爆発範囲 | 5~15%(vol%) |
酸素及び発火源があると爆発(燃焼)する範囲です。 |
メタンの発生・製造
メタンは、自然界および人間社会の双方で発生しています。
自然界では、沼や湿地、田んぼなどに存在する有機物が酸素の少ない環境下で分解される「嫌気性分解」によって生成されます。また、家畜の消化管内での発酵過程でも発生します。

人間活動に起因するものとしては、廃棄物処理施設(ごみ処理場・下水処理場)や化石燃料の採掘現場、バイオガス設備などが挙げられます。
このように広範な発生源を持つメタンは、大気中にも微量に存在しています。
世界気象機関(WMO)温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)の解析によると、2024年の大気中メタン世界平均濃度は1,942 ppbであり、前年から8 ppbの増加が確認されています。
参考:大気中メタン濃度の経年変化 国土交通省 気象庁
https://www.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/ghgp/ch4_trend.html
このように自然界や人間社会でも発生するメタンですが、通常私たちが使用するメタンは、世界のガス田より採取される天然ガスから精製されます。
天然ガスの起源は、数千万年~数億年前に生息していた動植物の死骸が地中に埋もれ、長い年月をかけて分解されて天然ガスや石油へと変わっていく「有機起源説」が有力とされています。
そのため、直ぐに欲しくても新たに作られる訳ではなく、限りある資源から製造されることもあり、持続可能な社会のために新たな供給先も模索されています。
また、メタンは-162℃まで冷却することで気体から液体となり、体積が600分の1になる特性があります。
この特性は天然ガスを液化した液化天然ガス(LNG)として、輸送に活用されています。
メタンの用途
メタンは主に燃料として使われ、その他用途では化学製品の原料等で使用されます。
燃料としてのメタン
メタンは、主に天然ガスの主成分として、LNG(液化天然ガス)発電用及び都市ガス用の燃料として使用されます。
その理由の一つは、石炭や石油などの他の化石燃料と比較して、燃焼時に発生する硫黄酸化物(SOX)や煤塵が少なく、二酸化炭素の排出量も相対的に低い点にあります。
また、天然ガスは比較的世界各地に広く埋蔵されており、供給量も多く、液化することにより大量に輸送ができるという点もメタンが活用される理由です。
このように、燃料として広く使われているメタンですが、実際にはメタン単体で供給されることは少なく、同じアルカンのエタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)の混合ガスとして利用されています。
混合ガスとして使用されるメタンですが、日本でも都市ガスとして使われ、その分類は発熱量・燃焼速度の違いから7グループ13種類に分けることができ、代表的なものは「13A」と「12A」です。
多くのガス機器には「13A」「12A」あるいは「都市ガス用」といった表示があり、それぞれの特性に適合するように設計されています。
組成には多少の違いありますが、基本的にはメタンが主成分であるため、都市ガスの漏えい検知は実質的にメタン検知といえます。

(出典)大阪ガス「都市ガスの性状」
https://www.osakagas.co.jp/company/business/service06/index.html
日本の都市ガスはLNGとして海外から輸入しており、輸入されたLNGは各地のLNG基地で貯蔵され、気化された後、ガスタンクや導管網を通じて各地域へ供給され、最終的に家庭や事業所へと届けられています。
メタンを含む都市ガスは可燃性ガスであり、空気中で一定濃度に達すると燃焼・爆発の危険性があるため、早期に検知や安全確保が重要となります。なお、都市ガスには漏えいを認識しやすくするためわざと臭い(付臭剤)がつけられています。

化学製品原料としてのメタン
メタンは燃料としてだけでなく、さまざまな化学製品を製造するための重要な原料としても利用されています。ここでは代表的な例として、水素とメタノールの製造について紹介します。
① 水素の原料(水蒸気改質法)
工業的な水素製造では、天然ガスに含まれるメタンを原料とする水蒸気改質法が広く用いられています。
この方法では、メタンを高温の水蒸気と触媒の存在下で反応させ、水素と一酸化炭素を生成します。
メタン改質反応式
CH₄ + H₂O → CO + 3H₂
この反応は吸熱反応であり、約700〜800℃の高温条件で行われます。
さらに生成した一酸化炭素に水蒸気を反応させることで、追加の水素を生成することができます。この反応を水性ガスシフト反応と呼びます。
水性ガスシフト反応式
CO + H₂O → H₂ + CO₂
これらの反応を組み合わせることで、メタン1分子から最終的に4分子の水素を得ることが可能になります。

② メタノールの原料
メタノールは、天然ガスから得られる合成ガス(主に水素と一酸化炭素)を原料として製造されます。
銅・亜鉛系触媒を用い、高温・高圧条件下で反応させることで生成されます。
メタノール合成反応式
CO + 2H₂ → CH₃OH
メタノールは、炭素原子を1つ持つ化合物からさまざまな化学製品を合成するC1化学の中心的な物質とされており、多くの化学製品の原料や溶剤として幅広く利用されています。
このようにメタンは、エネルギー資源としてだけでなく、さまざまな化学製品を生み出す基礎原料としても重要な役割を担っています。
メタンとこれからのエネルギー

メタンは、都市ガスなどのエネルギーとして広く利用されている一方、限りある資源のため新たな供給先が模索されています。
メタンハイドレートとは〜メタンの新たな供給源〜
メタンハイドレートは、メタンガスと水分子が結びついてできた氷状の物質です。
火を近づけると燃えることから「燃える氷」とも呼ばれています。
日本近海の海底には大量に存在すると推定されており、資源に乏しい日本にとっては将来のエネルギー資源として注目されています。
しかし、メタンハイドレートは深海や海底の地層など、採掘が難しい場所に存在しているため、安定して採取・生産するための技術にはまだ多くの課題があります。
また、採取に伴うメタン放出による地球温暖化への影響や、海底環境への影響なども懸念されています。
このような背景から、実用化に向けて日本近海を中心に、採取技術や生産方法に関する研究・実証試験が進められています。
(出典)
・十勝毎日新聞電子版「十勝沖でメタンハイドレート採取に成功 次世代エネルギー資源 太平洋側で国内初 北見工大」
https://kachimai.jp/article/index.php?no=520376
・京都大学 研究ニュース「鳥取県沖・隠岐海嶺から塊状メタンハイドレートを採取」
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2025-09-16-3
メタネーションとは〜メタンの新たな製造方法〜

メタネーションとは、水素(H₂)と二酸化炭素(CO₂)からメタンを合成する技術のことで、近年注目されているメタン製造方法の一つです。
メタンを燃焼させると二酸化炭素が排出され、地球温暖化の原因となります。
しかし、排出されたCO₂を回収し、メタンの原料として再利用することができれば、燃焼時に排出されるCO₂を相殺することができ、大気中のCO₂増加を実質的に抑えることが可能になります。
さらに、メタネーションで使用する水素を再生可能エネルギー由来の電力で製造すれば、燃焼時に排出されるCO₂はもともと大気中に存在していたものとなります。
このような仕組みにより、合成メタンはカーボンニュートラルなエネルギーとして期待されています。
一方で、合成メタンの製造コストや、再生可能エネルギーを用いた水素製造コストの高さといった経済的課題が残されています。
また、設備の小型化や大量生産技術の確立など、技術面でも解決すべき課題が多く、実用化に向けた研究開発が進められている段階です。
(出典)
・資源エネルギー庁「ガスのカーボンニュートラル化を実現する『メタネーション』技術」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/methanation.html
このようにメタンは、天然資源としてだけでなく、新しい技術によって生み出されるエネルギーとしても注目されています。
メタンは私たちの身近なエネルギーであると同時に、これからのエネルギー社会を支える重要な存在として、今後もさまざまな分野で研究と活用が進められていくと考えられます。
メタン検知の必要性
本記事では、メタンガスの基本的な性質や発生の仕組み、エネルギーや化学製品の原料としての用途などについて紹介しました。
メタンは天然ガスの主成分としてエネルギー分野で広く利用されており、水素やメタノールなどの化学製品の原料としても重要な役割を担っています。
また、都市ガスの主成分でもあることから、私たちの生活や産業活動を支える身近で重要なガスといえます。
一方で、メタンは可燃性ガスの一種であり、空気中で一定の濃度範囲に達すると燃焼や爆発の危険性があります。このため、安全に利用するためには漏えいを早期に検知することが重要です。
主な理由として、次のような点が挙げられます。
■ 爆発・火災の防止
非常に燃えやすく、空気と混ざると爆発範囲(約5〜15vol%)に入りやすい。
■ 作業員の安全対策
ガス漏れによる中毒や窒息、爆発から作業員を守る必要がある。
■ 環境対策
地球温暖化係数(GWP)が25であり、(二酸化炭素のGWPは1)、排出量削減目標達成のため、排出源の特定と削減が必要です。
メタン検知用ガスセンサ
フィガロ技研のガスセンサは、都市ガス警報器向けに世界中で採用されており、メタンを含む可燃性ガ スをいち早く検知することで事故のリスク低減に貢献しています。
Gas Sensing Innovation
フィガロ技研は世界トップレベルの生産販売量を誇るガスセンサメーカーです。
1969年の創業以来「独自のガスセンシング技術を通じて、世界の人々の安全・安心・快適な生活を実現する」を合言葉に、半導体式ガスセンサをはじめとした各種ガスセンサの研究開発、応用商品の開発・普及に取り組んでいます。
ガスセンサのことなら
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海外代理店ネットワークを構築し、北米・ヨーロッパ・アジア諸国49カ国以上にさまざまなガスおよび用途に使えるガスセンサを供給しています。
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製造時の温度や湿度によっても品質が変化するガスセンサ。徹底した品質管理体制と検査システムにより高品質と大量生産を同時に実現しています。
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省エネ・環境保全
自社及び協力会社と共に、ガスセンシング技術及び様々な業務における取り組みを通じて、省エネルギー化(CO2削減)と地球にやさしい製品創りに貢献します。
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センサモジュールの仕様、動作、各地域の技術規格への対応に関する技術的なご質問にも、当社スタッフまたは各地域の販社、代理店スタッフが丁寧に対応いたします。北米 / アジア / 欧州各国に対応
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